アメちゃん事件

日1日と言葉を覚え、言いたいことをドンドンしゃべるようになり、嬉しい反面だんだん手が掛かるようになり、嫁と話すにも隠語を使わないとややしくなることが増えてきた。

家のリフォームの進捗具合を確かめに、元の家を見に行ったら、日曜日だというのに工務店の社長さんが来て細かい部分を仕上げに掛かっていた。今日は雨漏りの原因を突き止めるべく四苦八苦されていた。
娘も新しくなったおウチが嬉しい様子で、アチコチの扉を開けたり閉めたり、広くなったリビングをグルグル走り回ったり…大はしゃぎである。
少し目を離した隙に社長の近くに寄っていって仕事の邪魔をする。もちろん本人にそのつもりはないのだろうが、気が散ってしょうがないだろう。
知らない間に、社長がアメちゃんを一つくれたらしく、嬉しそうにこちらに見せにきた。
内心、アメなんて与えられては困るなぁ…と思いつつも、出てきたセリフは
「おっちゃんにありがとう言うたんか?」

それ以降、ずっとアメちゃんを離そうとしない。
どうにかアメちゃんから手を離すよう誘導して、他のことをして遊んで忘れさせることで、口に入れさせない作戦だったが、なかなか手を離そうとしない。
仮住まいに一旦戻ってから公園に出かける際、アメちゃんを家に置いていくよう説得するが、
「ポケットに入れておく」と頑として譲らない。
「落としたらなくなっちゃうで」と言っても「イヤ、ポケットに入れておく」の一点張り。
こうなったら隙を見て抜き取って、娘には落としてなくしたでしょ〜だから置いておき言うたやんか〜って諦めさせるしかない。

公園でブランコに乗せている時、チャンスが訪れた。「今しかない!」
すっ〜とポケットに指を滑り込ませ、アメちゃんの袋に触った瞬間、適当なことを話しかけて注意をそらす。
アメちゃんを見事奪取して自分のポケットに入れたが、気付かぬ娘。
このままアメちゃんのことを忘れていてくれたら…と思ったが、帰宅してアメちゃんが無い事に気付いて、超大泣き。探しに行くいうて散々暴れに暴れた。
許せよ、娘…